SuyamaKazuhiko

小説

ミソハギの花

霞ヶ浦湖畔に建つ有料老人ホームに安田芙美子が入居したのは、今年の二月だった。芙美子は今年で八十三歳になった。入所前は、土浦市内の一戸建て住宅で、息子の進一郎、孫の翔太と暮らしていた。進一郎は五十六歳で、地元の食品加工会社の経理主任を務めてい...
小説

道の駅

野沢祥子は霞ヶ浦大橋の袂にある産地直売の店に勤めている。すぐ近くには「霞ヶ浦ふれあいランド」があり、約六十メートルの高さの「虹の塔」がよいランドマークになっていた。茨城県の内水面水産試験場、大型スーパー、ドラッグストア、ファミリーレストラン...
小説

ブルーギルの子

―ぼくは、霞ヶ浦の近くの、広いハス田の中の水路でくらしている。大きさは、人間のものさしでいうと、4センチメートルくらいだ。生まれた場所は、よくおぼえていない。たぶん霞ヶ浦の浅瀬で、杭があったり、アシも生えているような、淀んだところかもしれな...
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光る湖面

島崎富蔵は、霞ヶ浦に面したリフォーム住宅の二階の部屋で、朝食後の時間を過ごしていた。初夏だった。アームチェアに座ると、採光に配慮した大きなガラス戸の向こうに霞ヶ浦と筑波山が見えた。朝の柔らかい光が湖面の漣に映じて、微細な石英の粉を散りばめた...
小説

のっこみ

この冬、霞ヶ浦地方では雨がほとんど降らなかった。一月から三月の約三ケ月間、乾燥した日が続いた。長年勤めた地方銀行を十年前に定年退職し、さらに取引先の関連会社の経理を五年間担当してようやく完全に退職して、年金暮らしとなった池辺栄二にとって、雨...